世界湖沼会議

声明書

2005年11月4日: ナイロビ/ケニア

古代湖の湖底に記された足跡の化石でも明らかなように、湖沼の豊かな資源はここアフリカにおいて数万年前の初期人類をひきつけ、今日の我々人類の歴史に 脈々と引き継がれてきている。今我々が喫緊に取り組まねばならぬことは、地表における液状淡水量の90パーセント以上を占めて、生命維持のための複雑な生 態系である世界の湖沼を、次の世代の健全なる心身を継続して保証できるように、守ることである。

こうした保全への取り組みを表明するために、我々は、湖沼の将来は次の事項に大きく関っていることへの人々の理解と感謝の気持ちにかかっているということを認識しなければならない:

周辺の空間環境とそこでの人間活動
湖沼につながる河川・地下水および湿地の状態
栄養塩類や汚濁物質をはるか遠方から運びこむ風の状態

人間活動に基づき、気候を不安定にする急激な地球大気の変化

また、我々は、湖沼資源を利用し、間髪を置かずに損傷を与える結果を経験してきた人々がまず重要な意味を持つことをも認識しなければならない。このような 湖辺の住民は、男女を問わず、集落の文化的な記憶と湖沼の時による変化を共有しており、問題の根源と解決につながる方策についての最良の知識を持っている ことが多いのである。このような長期に培われた経験が、湖沼というものが濫用された場合の長い記憶を記しており、その複雑な動態に隠された多くの秘密を暖 めているが故に、基本条件となるのである。そのためには;

我々は、管理方策の決定に当たってはまず真っ先に地元の知識と洞察力に基づかねばならず、
我々は、集落単位の行政能力と科学的知見を育てるため、地元の人々が解決策を見出せるよう奨励するために召集可能な人的・物的資源を利用しなければならない。そうすることで、科学者・政策決定者および地域社会の間のギャップが埋まることになるのである。

同時に、最前線に立つ地元の人々は、その行動が湖沼に危害を与えることが多いが故に、力の行使には責任を負わなければならない。彼らは、健全な湖沼を維持 するにはコストがかかること、そして不健全な湖沼はその事実自体にコストがかかることを認識しなければならない。賢明な対応を奨励するための手段としての 利用料徴収に取り組む場合には、努力を継続するために、地元が収益の主要部分を利用することが不可欠である。

国の行政機関も、啓発を進め・参加を求めそして湖沼流域内の各界各層を糾合する上で不可欠である。能力があり効果的な運営が行われれば、行政は、水系と大 気の影響とのつながりについての流域の全体的・広範な関りとしての幅広い管理対策を推進する舞台を整えることになる。また、行政は、湖沼流域に住み湖沼の 資源に依存する人たちの間で競合しがちな要望についての意見表明の場も提供することになる。そうした橋渡し的な枠組みや総合的な見通しがなければ、水問題 あるいは湖沼資源問題全体にわたる競合を解決し、あるいは、国家計画や開発計画の中に健全な湖沼を維持するための地元の努力を集約するための手段は殆どな い。こうした政策を樹立するにあたっては、政府機関は湖沼周辺の地域社会に配慮し、湖沼に依存している人たちの中の最大関心層が便益を享受することを保証 しなければならない。さらに、国家の指導者は、国際的な管理計画・遠方からの大気汚染および気候変動といった問題点を明らかにすることができる国際社会の 場に出て、解決策を訴えることである。世界湖沼ヴィジョンが日本で開催された第3回世界水フォーラムで発表され、湖沼流域管理イニシアティブが本第11回 世界湖沼会議で発表されて、こうした課題を明らかにし、成果のある湖沼流域管理を達成するための方途を指し示した。

国際的な支援は、湖沼とその資源の健全性を維持する上で不可欠のはずみとなるものであるが、必ずしも人間活動と湖沼の生命システムの間の相互関係を正す究 極の解決策になるわけではない。世界全域での経験からみて、GEFといった国際的な資金源が、湖沼流域における人間活動を管理する触媒的な役割を果たし得 ることを示している。しかしながら、より長期的に見ると、地方政府と国家政府 がその仕事を継続するための不断かつ継続的な必要資金の確保を保証しなければならない。地方政府は、こうした目標達成のために、湖沼利用料といった革新的 な対策を試みなければならないであろう。地域社会が、湖沼や湖沼流域で生活し働く人々に代わってさらなる努力を遂行するために、このようにして生み出され た資金のいくらかを保持し、利用することが同様に大切である。つまり、湖沼問題を語る場合には、国際機関は、その活動を構想し計画するに当たって、地元の 要望に第一義的な重点を置かなければならない。

ここ数十年にわたり、我々は、人間活動と湖沼流域における生命システムとの間の相互影響関係の取り扱いについてゆっくりと学んできた。この経験は、統合的 水資源管理における湖沼の中心的な役割を浮かび上がらせている。科学者と行政官が集まって協調したこのような経験は、人間と自然とに水を供給する天然湖沼 や人工湖沼の健全性を維持する上での重要な教訓をもたらしている。今後何十年もの間、増大を続ける水需要に応えようとするならば、こうした教訓を取り入 れ、それを活かすことが緊要である。

水は千年紀開発目標の全てにわたる実質的な支柱であるという事実は、民間部門を含めた戦略的なパートナーシップ構築の必要性に対する説得力のある証拠とな るものである。このことは、湖沼とその資源に依存する人々の生活と生計を改善しつつ、貧困を軽減し、安全な食糧の供給と経済発展を保証するために、湖沼と その資源を公正に利用することの一助となり得るものである。